新ルール適用後、初のGⅠとなった第70回高松宮記念杯競輪。オーソドックスな400㍍走路の岸和田バンク。注目されたのは赤板ホーム線、すなわち失格ラインを巡っての駆け引きだ。
自力選手への取材の中で一番耳にしたのが「後ろから抑えるだけで脚を使ってきつい」というコメント。以前よりも誘導ペースが上がっている中で、後方から上昇して前団を押さえるのだから当然のことだろう。
では前受けになった選手はどうなのか? こちらは二つに分類できる。
まずは後方に下げた場合。誘導が上がっている中で抑えた選手がそのまま先行しただけで、以前よりもペースは上がっていて当然。
バックを踏みながら7、8番手まで下げて、そのハイペースを叩こうというのだから、かなりの脚力と度胸がいる。
「合わせられると思って仕掛ける勇気がなかった」という選手も少なくなかった。
もう一つは突っ張った場合。この有効性は新ルールが発表された当初から推測されたものだった。
厳格化された失格ラインに対して慎重に上昇してくる選手を、前受けの選手が全開で踏み合わせてしまえば、そこでライン的な勝敗が決する。
ここまで実際に見られたのは数件だが、合わされた側の感想としては「あれをやられたら何もできない」が本音。
この作戦に、車番の良さが大きく関与してくることも想像の範囲だ。
対抗策は…ある。東日本準決勝12Rで見せた近藤隆司の走りがそのヒントだ。
初手後方でも下手に抑えず、赤板4コーナーの山おろしを使い、猛スピードで失格ラインのギリギリを通過。これなら中団や前団の選手をダッシュぶんでねじ伏せることができる。
本人の言葉を借りれば「ボートレースみたい」。そう、フライングスタート方式である。
スピードに乗っていたぶん、5秒ルール(先頭ゴールより5秒以上遅れると失格)もクリアできた。絶対に主導権を握りたいラインにとっての新常識になるかもしれない。