七夕の日の小松島記念決勝戦は地元の太田竜馬がパーフェクトで地元Vを飾った。終わってみれば大団円だったが、ファイナルまでにはさまざまな出来事があった。
2日目二次予選ではSS班の三谷竜生が落車欠場。準決勝10Rでは浅井康太が失格になり、続く11Rでも村上義弘が5着で敗退した。これでSS班3選手が決勝戦に不在の〝非常事態〟。これに合わせたかのように後半2日間は他のレースでも大荒れだった。
荒れた理由は新ルールになった影響が大きいと感じた。新ルールでは周回中からペースが上がり、後ろになったラインは残り2周のホーム線へ向けて勢いよく踏み込む。簡単に出させてはならじと、前にいるラインも踏み込む。打鐘前後での攻防は以前よりもし烈だ。前、後ろのどちらにいるにせよ、脚力をロスした状態で最終周回を迎えることになる。優勝した太田もレース後に「いっぱい、いっぱいでした」と話すように、南潤の先行を相手にギリギリの勝負だった。絶好調の太田だったからしのげたが、不発で大波乱となってもおかしくはなかった。
荒れ過ぎだと不満ばかりは言っていられない。新たなスター誕生の予感もあった。それは一次、二次予選を圧巻のまくりで突破した植原琢也。レース内容はもちろん、エリートの自転車競技の選手だったのに、さまざまな職種を経験して競輪選手になった異色の存在で注目を集める。デビュー後は113期の出世争いからは遅れたが、やる気になるとすぐにS級特進を決めた天性の素質の持ち主だ。準決勝敗退後は悔しさいっぱいの表情が印象的だった。このシリーズで強くなるためのスイッチが入った。次のトップクラスとの戦いが楽しみだ。(緒方 泰士)