年が明けてもなお、初観戦したKEIRINグランプリ2018(GP)の余韻が残っている。三谷竜生の涙の初V。一方で脇本雄太(29=福井)は近畿勢4車の先頭で先行したものの、直線で失速し5着だった。昨年の彼の強さを目の当たりにしてきたファンなら「なぜ?」と思っている方も少なくないだろう。5月ダービー(平塚)以降は全てのGⅠで決勝に進出し、8月オールスター(いわき平)と10月寛仁親王牌(前橋)の2冠を達成。〝先行日本一〟の脇本が、だ。
敗因の一つに風と気温10度を下回る先行不利のバンクコンディションが挙げられる。他にも「気持ち的にはGⅠの決勝と変わらなかったけど、比べものにならなかった」と初出場で雰囲気にのまれた部分もあったかもしれない。そして何より、GP2勝の浅井康太に歯車を狂わされた。
打鐘前2角過ぎ。脇本が6番手から踏み上がろうとした瞬間、車体を外にヒュンとひと振りされた。前にいた浅井のけん制だった。難なくかわしたと思われたが「浅井さんの動きを見ていなかった。バランスを崩して…。焦って踏んで自分のタイミングではなかった。ゴールまであと30㍍持たなかった」。経験豊富な浅井の〝魔術〟にかかってリズムを崩し、1周半後、ゴール前は予想外の混戦となった。
来年に迫る20年東京五輪での金メダル獲得を目標に掲げる脇本。「GPに絶対はない。(全員が)普段やらないことをやってくる。楽しかった。1番人気を背負って期待に応えられなかったのは残念だけど、次の機会に獲りたい」と振り返った。満足のいくレースではなかったが、得たものは大きい。2万2000人の大観衆の前で走ったことが世界一につながると信じてやまない。
♤出田 竜祐(いでた・りゅうすけ)1980年(昭55)9月29日生まれ、熊本県出身の38歳。明大卒。05年スポニチ入社。芸能、サッカー、ボートレース担当を経て今年4月から競輪担当。GPは3連単❶(三谷)❸(脇本)❷(浅井)を厚めに勝負したが撃沈。まさか❶❸❷が大みそかのボートレース・クイーンズクライマックス優勝戦の出目になるとは…。