2016年3月13日「第69回日本選手権競輪」

2016年12月31日付スポニチ本紙記事より抜粋

 “魂のレーサー”が2回目のGP制覇――。平成28年熊本地震被災地支援競輪「KEIRINグランプリ2016」は12月30日、東京・立川競輪場で行われた。逃げた稲垣裕之を目標にした村上義弘(42=京都・73期)が番手まくりで優勝。12年以来、2度目のGP覇者となった。村上は賞金1億160万円を獲得し、12年以来、2回目の賞金王に。年間獲得賞金額は2億2920万円に上り、延べ8人目の2億円プレーヤーとなった。2着には武田豊樹、3着に浅井康太が入った。

◇涙こらえ表彰台

 表彰台で村上が涙をこらえた。「この場に立てるとは思ってもいなかった…」。1万5000人を超えるファンが拍手を送る。「年々苦しい戦いになって、ファンの皆さまに迷惑をかけることが多くなり、申し訳ない気持ちだった。その中でも応援してくれる方々が本当にありがたかった」。ファン投票1位に3度支持され、ファンを誰よりも大事にする村上ならではの言葉。腹の底から絞り出すような声だった。

 10度目のグランプリ舞台。稲垣に前を任せた。冷たくて重いバンクコンディション。「前半のレースのタイム、傾向から考えて稲垣が持ち味を発揮できる組み立て」。そう判断した村上がスタート直後に前をキープした。稲垣が先行態勢に入る。最終バックで平原がまくってきた。「平原君は強い。無我夢中で踏んだ」。平原に踏み勝つと今度は武田が直線強襲。42歳同士の戦い。しのいだ。村上が真っ先にゴール線を駆け抜けた。

 ゴール直後、村上は勝ったかどうか分からなかった。「武田さんの勢いが良かったから…」。オーロラビジョンで確認した。ファンも「村上、おめでとう!!」と言ってくれた。歓喜のウイニングランで応えた。「自分の現状の力は他の8人に負ける。ただ、競輪はパワーとスピードだけでは勝てない」。1メートル70しかない村上の真骨頂といえる一戦だった。

「競輪は夢与えてくれる」走り抜けた16年

 「僕は雪の日でも雨の日でも変わらない練習をしている」。雨、風、低温の悪いバンクコンディションに村上が強いのは猛練習の裏付けがあるから。4年前、12年の京王閣グランプリ制覇も真冬の大雨という悪いコンディションの中だった。

 来年は1番車のチャンピオンユニホームを4年ぶりに着る。「地獄のような日が続く(苦笑)。そのくらい責任を感じる。一戦一戦、気持ちを込めて走っていくだけ。競輪は僕に夢を与えてくれる」。魂で走り抜いた。村上イズムは17年も何ら変わらない。 (中林 陵治)