5回目のチャレンジにしてつかんだ競輪界の頂点に松浦は「うれしいしかないです」と顔をくしゃくしゃにして喜んだ。本人にとっても、広島県所属の選手にとっても初のグランプリチャンピオンの誕生だ。そして今年は純白のユニホームをまとっての1年となる。
決して順風満帆な2023年ではなかった。グランプリ直前の別府記念決勝でも、最終2センターで大塚健一郎(失格)に押し上げられた際に外の三谷竜生と接触して落車。さらにへんとう炎で体調を崩すなど、決して盤石とは言えない状態での立川入り。それでも栄冠を引き寄せることができたのは、二人三脚でビッグ戦線を渡り歩いてきた盟友清水の存在があってこそだろう。
一昨年のグランプリは清水不在。2段駆けが予想された北日本ラインを乱すことしかできずに終わった。清水がいてこそ見えてくる景色がある。昨年大会で見せた深谷知広へのスイッチがまさにそれ。清水の奮闘があってこそ、あのコースが生まれたのだ。
逆の並びだったら清水に栄冠が輝いていたかも知れない。その清水、今年に入ってからは大宮記念V→川崎記念2着→静岡記念Vと絶好調そのもの。内容も素晴らしい。大宮決勝では関東2段駆けを6番手捲りで沈め、直前の静岡決勝では4番手を確保すると、番手捲りを放った深谷に外並走で踏み勝っての勝利。SS返り咲きを果たした今年は、いままで以上に勝利に対しての貪欲さを感じる。
「年末から使っている新車が、グランプリの時もかなり良かったけど、そこからもいい。新車さまさまです」
獲得賞金は早くも1600万超え。ランキングトップで初栄冠(20年、豊橋)を飾った相性のいい全日本選抜に乗り込む。松浦との黄金タッグで互いの可能性を高め合い、2つ目のGⅠタイトル獲得を目指す。