2012年12月30日「KEIRINグランプリ2012」

2012年12月31日付スポニチ本紙記事より抜粋

 村上兄が悲願の初V。「KEIRINグランプリ2012」は30日、京王閣競輪場で争われ、村上義弘(38=京都・73期)が最終2角3番手からまくって優勝。賞金1億円を獲得して12年の賞金王に輝いた。10年の村上博幸(33=86期)と兄弟でのグランプリ制覇は史上初の快挙となった。2着は成田和也で2車単(4)―(3)は1万4190円(51番人気)。波乱の決着となった。

◇成田との壮絶ゴール前勝負制した

 気温4度、冷たい雨が降りしきる中の大一番。「今年は苦しいことばかりの1年だった。最後くらいは笑って締めたい…」。村上の熱い思いが天に通じた。

 度重なる落車に苦しんだ。6月高松宮記念杯初日、9月前橋オールスター決勝、そして直前の16日に練習中の落車で右肋骨骨折。「自分にできる範囲でできることをやってきた…」。6回目のグランプリは今までで最も苦しい状態だった。

 ただ「悔いの残らないように自分の力を出し切る」という強い気持ちだけは誰にも負けない。冷たく重いバンクを苦にしないのも強みだ。打鐘過ぎ2センターから深谷―浅井が武田を叩くと村上はこの3番手に続き、最終2角からは「自分のタイミングで力を出し切るように目いっぱい踏んで」。成田との壮絶なゴール前勝負を制した。

 約3・5センチ。差はわずかにタイヤ。ゴール直後は外の勢いが良かったため「(1着に)残っててくれ…」と祈りながら大型ビジョンのVTRを見つめた。そして1着を確認すると両手を突き上げ「やった!!勝った!!」と雄叫びを上げ、ファンの声援に応えた。

 優勝直後、村上がファン間近のステージに登場すると、村上コールが沸き上がった。「どんなに苦しい時も応援していただいてありがとうございます」。一語一語を、かみしめながらファンにあいさつする村上の目は充血して熱い涙が止まらなかった。

「これで弟に追いついた」。

 日本選手権に続いてグランプリも史上初の兄弟制覇を飾った。「自分の家族を日本一の家族にできてうれしい」。表彰式、記者会見後は京都から応援に来た家族と喜びを分かち合った。「来年はグランプリ優勝者にふさわしい走りをしたい」。13年は村上がグランプリチャンピオンジャージーの1番車でさらなる熱い走りを見せる。 (中林陵治)