<山田ブラザーズが今年も沸かせる>
昨年の武雄71周年記念は地元が誇る最強ブラザーズである山田英明と山田庸平がそろって決勝進出。過去に同じレースを走ったのは自動番組だった17年のGⅡ共同通信社杯初日(武雄)、そして20年のGⅠ寛仁親王牌決勝(前橋)の2回。1回目は別線で勝負し、2回目は兄の英明が前回りだった。3回目にして初めて庸平―英明の並びで戦った決勝は、清水裕友―松浦悠士の中国ゴールデンコンビがレースを支配し、松浦がVをさらった。当時の心境などを山田兄弟それぞれの視点、言葉で振り返ってもらった。
最初の2回について
英明「1回目は庸平と、園田匠さんもいたんですよね。簡潔に言うと〝折り合わなかった〟です。お互いの気持ちというか考えが。それで話し合った結果、僕は園田さんと頑張ると伝えて、それで庸平が『自分で動く』ってなった。2回目はGⅠの決勝。庸平は『(前で)頑張る』と言ってくれたけど、後悔をしたくなかったし、庸平に選手としての魅力をそこまで感じていなかった。準決勝も決め打ちで脇本(雄太)君の3番手を回って、流れ込んだ。自力で組み立てたわけではなかったんですよね。それで自分が前になった。今思えば、ちょっと頑固だったかな、付いても良かったかな、って思ったりもしていますね」
庸平「親王牌の時は一緒に決勝に乗れてうれしかったですね。前で走りたい気持ちを伝えたけど、任せてもらえなかった。自分の実力がないことを気付かされましたね」
昨年の武雄記念、並びが決まった経緯
英明「また(前で頑張ると)言ってくれた。頑張っている姿を見てきたし、今度は断る理由がなかったので任せることにしました」
庸平「まず武雄記念の決勝に初めて乗れたのでホッとしたのと、(兄に)前を任せてもらえた。少しずつ認めてもらえたのかなと思うとうれしかったですね。兄弟で一緒に走る機会は限られているので」
弟―兄の並びで戦った地元記念決勝
庸平「初めて連係した親王牌決勝の方がレース前とかも印象に残っているかな。先行態勢に入ったけど、(清水)裕友にすぐに行かれてしまい、先行すらさせてもらえなかった。自分の中では納得できるレースではなかったし、悔しくて、また1年後と、思って頑張ってきた」
英明「どうなろうと、信頼して付いていこうと思っていた。走っている時は練習と同じような感じでしたよ。S級S班が並んで、どちらかが優勝すれば、という競走をされてしまったし、仕方ないかな。庸平から前々に行くという気持ちが伝わってきてうれしかったですね。レース後は、〝展開上、もう少し待っても良かったね~〟と言葉をかけたくらいですかね」
68周年で地元記念を初制覇。近年はグランプリ出場を目指して奮闘を続けてきた兄の英明と、急成長を遂げて今や佐賀の新エースと呼んでもおかしくないほどにまでなった弟の庸平。地元記念決勝での連係は今後も機会があるだろう。庸平にとっては、今回が昨年の悔しさを晴らす絶好の舞台だ。最後に、お互いへの想い、そして間近に迫った地元記念への意気込みを聞いた。
英明「自分のことで精いっぱいだけど、庸平と切磋琢磨して、おのおの上を目指す存在でいたい。バンクで会えば一緒に練習はしますよ。でも他の選手も同じですね」
庸平「兄貴を見て選手になったし、兄貴のレースを見ていい部分を取り入れたり、試したりしてずっとやってきた。いい目標というか、参考というか、うまく言い表せられないですけど…。やっていることは近いと思っています」
英明「(2月の)全日本選抜の落車で骨盤にヒビが入ってしまった。3月のGⅡ(ウィナーズカップ)を走りたかったので、無理に仕上げていったけど、レースで戦うレベルに戻っていなかった。練習ではだいぶ戻っていると思ったんですけどね。そこから練習とケアを、しっかりと気を配ってやっています。ケガした時を思えば良くなっているけど、ケガ前と比べてだと、どうなのかな。ケガの功名じゃないけど、今まで気付けなかったことに気付けたし、収穫もあった。地元記念は(4年前の)優勝した時のお客さんの歓声が忘れられない。またあれを味わいたい。走る以上は優勝を目指すけど、あとは自分の体がどこまで持つのかな、と思っています。なんとかしがみついて、一つ一つ勝ち上がっていきたい。気持ちだけはしっかりと持って優勝を狙いたい」
庸平「練習でペダリングをイメージして、去年の後半くらいから練習のタイムが良くなってきた。そして今年の2月、3月でまたひと段階、上がってきた感じがある。練習でタイムを上げられて、それがレースに出てくれている。地元記念は、自分の中では一戦一戦、大事にやっていかないと、と思ってやってきた。以前に比べると地元記念に対する気持ちも大きくなってきているし、周りもそう見てくれる。とにかく、一戦一戦を大事に、去年の悔しさを忘れずに頑張りたい」
順調な弟に対し、兄は復調途上。それでも1年1回の地元記念に対する強い気持ちで乗り切ってくれるだろう。今年もそろってファイナル進出なるか、要チェックだ。
●山田ブラザーズが今年も沸かせる