“脚”で届けた笑顔

 失意の底へ落ち込んだ故郷。中川は自らの“脚”で笑顔を届けた。熊本地震被災地支援と銘打たれた16年5月の静岡・日本選手権競輪(通称ダービー)でG1初制覇。「練習なんてできる状況ではなかった。出場も迷ったぐらいで元気な姿を見せたいだけだった」。無欲の男に競輪の女神は“神風”を吹き込んだ。中川の勇姿に、復興へ歩み出した熊本が勇気づけられた。

 

 同年はリオで2度目の五輪出場。優勝賞金1億円を争う競輪グランプリにも出た。選手になる時からの「夢」をかなえ「モチベーションが上がらなくなった」。一時は燃え尽き症候群で成績が下降したが、昨年は年間6大会あるG1のうち2つで優勝。「それまでふがいない成績が続いていたが、年齢的にも真剣に取り組めるのは3~5年。完全燃焼したくて計画的にトレーニングを積み重ねた。その結果が出た」。こう胸を張る大車輪の活躍で、今年は競輪最高クラスS級S班に在籍している。

熊本競輪場の検車場でインタビューに答える中川誠一郎

「熊本競輪場が再開するまでトップでいるのが目標」